広報9月号プラス1ページ ------------------------------------------------------------ 安心で安全な暮らしのために 空き家問題を考える ------------------------------------------------------------  皆さんの周りに、誰も住んでいない「空き家」はありませんか。また、将来「空き家」になりそうな家をご存じですか。  近年、放置され老朽化した危険な空き家が全国的に増加し、社会問題となっています。空き家といっても個人の所有物であることから、その対策を個人の責任に委ねるしかないのでしょうか。それとも地域社会が空き家問題を解決する手段を見いだせるのでしょうか。 もっと深く 広報うつのみや+ 宇都宮情報 テーマに対するご意見をアイデア通信((7)ページ)でお寄せください。 広報9月号プラス2・3ページ ------------------------------------------------------------ 現状 空き家問題と向き合う ------------------------------------------------------------  新たな社会問題としてクローズアップされている空き家問題。本市でも、近所迷惑な空き家が増えています。  私たちの住むまちに空き家が及ぼす影響はどのようなものなのか。そして、増える空き家問題にどのように向き合えばいいのでしょうか。 少子高齢化などを背景に増加し続ける空き家  核家族化や少子化などを背景に、近年、居住者がなく利用予定のない空き家が全国的に増加しています。総務省の「住宅・土地統計調査」によると昭和58年以降、空き家率は増加の一途をたどっており、本市でも平成15年以降、全国の空き家率を上回る推移で増加しています。  また、1世帯当たりの人員が年々減少する中、老年人口比率は上昇傾向にあり、単身高齢者数の増加が懸念されます。さらに、住宅ストック(注)は昭和63年以降増え続けており、新しい住宅が増え続け、住み替えが進むと、空き家候補となる古く残された住宅は今後ますます増えていくことが予想されます。 注 住宅ストック 現在すでに建築されており、その地域に蓄積された社会的資産としての既存住宅のこと。 空き家が及ぼす地域への影響と課題  では、空き家は私たちの生活にどのような影響を及ぼすのでしょうか。空き家というだけで、ただちに問題になるわけではありませんが、所有者が十分な管理を行わないことで、次のような、地域への影響を招くことが懸念されます。 老朽化などによる倒壊や、風雨・地震などによる建築材の飛散などにより、近所の家や歩行者にぶつかる。 窓や扉が壊れているため不審者などが侵入し、火災や犯罪などの温床につながる。 廃棄物投棄や病害虫・悪臭の発生につながる。 樹木や雑草が敷地外にはみ出し、近所の家を損傷したり、歩行者の通行を妨げたりする。  また、空き家の問題には次のような事例も多く、解決に時間がかかるという課題もあります。 所有者の特定が困難。 相続放棄などにより相続人が確定できない。 所有者が高齢で、身体的・体力的理由から、すぐに対応できない。 他人事だと思わないでください 将来あなたも空き家の所有者に  親戚など身近な人が今は住んでいるけれど、将来空き家になってしまうかも、そんな心当たりはありませんか。実際、市が空き家の管理を相続人にお願いするため連絡すると、「まさか自分が」と驚く人が多くいます。  たとえ空き家の所有者になったとしても、迷惑な空き家にしないために何ができるのか。次からは空き家への取り組みを紹介します。 危険な空き家が及ぼす影響 繁茂した樹木で、道路標識が見えづらい。 窓や扉が壊れている、または施錠されておらず、知らない人が出入りしている。 空き家の屋根や壁が壊れていて、近所の家や歩行者にぶつかってしまう。 道路に外壁が崩れていたり、樹木がはみ出したりして、通行ができない。 空き家の内訳 出典:平成20年住宅・土地統計調査 賃貸用 68.4パーセント 売却用 5.6パーセント 二次的住宅 1.8パーセント その他 24.2パーセント  特に、管理不全により地域への影響が懸念される空き家が、本市にも約8,000戸存在します。 空き家戸数と空き家率の推移 出典:平成20年住宅・土地統計調査 昭和58年 空き家戸数(本市)10,810戸 空き家率(本市)8.3パーセント 空き家率(全国)10.1パーセント 昭和63年 空き家戸数(本市)14,520戸 空き家率(本市)9.7パーセント 空き家率(全国)10.9パーセント 平成5年 空き家戸数(本市)16,920戸 空き家率(本市)9.6パーセント 空き家率(全国)11.1パーセント 平成10年 空き家戸数(本市)23,630戸 空き家率(本市)12.1パーセント 空き家率(全国)12.6パーセント 平成15年 空き家戸数(本市)33,210戸 空き家率(本市)15.6パーセント 空き家率(全国)13パーセント 平成20年 空き家戸数(本市)31,930戸 空き家率(本市)13.8パーセント 空き家率(全国)13.1パーセント 1世帯当たりの人員と老年人口比率の推移 出典:国勢調査 平成2年 一般世帯の世帯数 152,862戸 1世帯当たり人員 2.99パーセント 老年人口比率 10.1パーセント 平成7年 一般世帯の世帯数 167,470戸 1世帯当たり人員 2.8パーセント 老年人口比率 12.1パーセント 平成12年 一般世帯の世帯数 180,311戸 1世帯当たり人員 2.66パーセント 老年人口比率 14.5パーセント 平成17年 一般世帯の世帯数 194,051戸 1世帯当たり人員 2.53パーセント 老年人口比率 16.9パーセント 平成22年 一般世帯の世帯数 210,240戸 1世帯当たり人員 2.4パーセント 老年人口比率 19.7パーセント 広報9月号プラス4・5ページ ------------------------------------------------------------ 課題 空き家をどうする ------------------------------------------------------------  空き家の管理は、所有者の責任であるのが原則ですが、実態として適正な管理が行われていない空き家が発生しており、今後も危険な空き家の増加が予想されます。  そこで、7月1日に施行した「宇都宮市空き家等の適正管理及び有効活用に関する条例」から、所有者・地域・行政の役割りや、地域・民間事業者独自の取り組みを紹介します。 所有者・地域・行政が連携して空き家問題に対応  危険な空き家の増加にも、今後、しっかりと対応できるように、「宇都宮市空き家等の適正管理及び有効活用に関する条例」を7月1日から施行しました。  空き家の問題は多岐に渡り、所有者の問題に留まらず、地域全体の問題にまで波及することから、所有者の責任を明確にするだけでなく、行政や地域の皆さんの役割りについても明らかにしています。  また、地域での自主的な活動への支援をはじめ、地域・事業者などの連携・協力による取り組みや、居住の促進などの空き家の有効活用についても対策を進めていきます。 所有者の皆さんの意識次第で空き家問題は改善します 所有者  修繕・改修など、所有者による自己管理が大前提となりますが、所有者だけでなく、相続予定者やご家族の皆さんは、次のことを心掛け、問題を発生させない取り組みを今からお願いします。 管理意識を高める 定期的に草刈りや清掃をしたり、建物に破損がないか点検したりする。 周囲に悪影響を及ぼしている場合は、修繕・改修など早急に適切な処置を行う。 自分で管理できない場合は、業者や知り合いに管理を依頼する。 情報を取得する 住宅改修などで使える補助制度などの情報の取得に努める。 地域とのコミュニケーションを図る 困ったことがあったら相談し合える人間関係を構築する。 住んでいるうちから、今後の活用意向などを明らかにしておく。 情報の共有などできることから取り組みを始めませんか 地域  空き家などの所在を把握し、所有者は誰なのか、安全上問題はないかという情報を、地域で共有し、問題が発生した場合には、行政などと協力して取り組めるようにしておきましょう。 所有者への管理の徹底や空き家の解消に必要な支援を行います 行政  市は管理が適正でない空き家の所有者に対し、管理を徹底させるとともに、所有者や地域の取り組みに必要な協力や支援を行います。 空き家が危険な状態であると認められた場合には、所有者に対し、管理を義務付ける「命令」を行い、命令違反に対しては、「氏名公表」や「罰則」を講じる。 市民の生命・財産などに対する被害が差し迫っている場合、危険を回避する「緊急措置」を講じる。 地域が行う空き家などの対策に関する活動費の一部を、地域まちづくり組織に対して補助する「地域活動費補助制度」や、現在居住している住宅または今後居住予定の住宅の改修を行う際の工事費の一部を補助する「住宅改修補助制度」などを行う。 地域・民間の独自の取り組み 自主活動や空き家の再生  空き家台帳の作成や、所有者からの委託による樹木の伐採や草刈りなど、独自の取り組みを始めている地域があります。  また、空き家や店舗を活用して、おしゃれなお店や憩いの場として再生させる「まちづくり」としての取り組みも始まっています。 地域の取り組み 安心して住めるまちづくりを目指して 明保地区 明るいまちづくり協議会長 島田 弘二 さん  私たちの地区では、空き家をマップに色付けし、どの家が空き家になっているのかを把握した上で、台帳に空き家の詳細を記入し、自治会全体での情報を共有するなど、住民一丸となって空き家対策に取り組んでいます。  所有者の許可を得て、塀からはみ出した木の枝や草の手入れをしたり、空き家を住民たちの憩いの場として再生させたりしています。また、パトロール中も、積極的に住民に声を掛け、コミュニケーションを大切にしています。 市内民間の取り組み 事例1 もみじ通り(西2・3丁目) 空き店舗をリノベーション(刷新) 長い間シャッター商店街だった通りに、次々と新しい店舗がオープン。きっかけを作った塩田さんの事務所も、もみじ通りにあります。 思いを受け継ぐ 空間プロデュースビルススタジオ 代表取締役 塩田 大成 さん  空き家になってしまうような古い建物の中には、「壊した方がいいのかもしれないけれど、もしかしたら使いたい人がいるかもしれない」と思わせるような魅力を持つ物件があります。私たちは、そんなひとくせあるけれど飛び抜けた特徴を持つ物件を発掘し、紹介しています。すでにあるものを積極的に使っていこうという考えは、新しいことを始めるための選択肢としてあっていいと思います。  今の世の中、子どもが必ずしも家を継いでくれるとは限りません。自分の資産のその先を早めに検討する必要があります。その時に、建物のこれまでの歴史や特長といった「力」を生かして、ひとつひとつの「場所」を作ろうとする、私たちのような「思い」を受け継ごうとする「他人」もいるのだということを知ってもらいたいです。 事例2 オレンジサロン石蔵カフェ(道場宿町) 空き倉庫を交流の場に再生 使われていなかった大谷石づくりの蔵をサロンに。認知症の人を支える家族が気軽に立ち寄れる情報交換の場として、また認知症の人が活躍する場として活用しています。 広報9月号プラス6ページ ------------------------------------------------------------ 私の見方 知らなかったでは済まされない 亀岡 弘敬さん ------------------------------------------------------------  不審者が入ってこないか、不良のたまり場にならないかなど防犯面を中心に、空き家に関する法律相談は増えてきています。ただ、空き家問題を法律で根本的に解決するのは難しいのが現状です。 法的に守られる所有権  そもそも法律は、「空き家」という事態を想定していません。空いていようが空いていまいが、人の財産として扱われます。そのため、空き家であっても、財産権の保障を規定した憲法第29条、所有権の内容を定めた民法第206条により、所有者の権利が保障されています。空き家の見た目が悪い・気味が悪いという程度にとどまり、他人の身体や財産にある程度の危険が発生しているのでなければ、行政などの介入も難しいでしょう。 過失がなくても責任を負う 所有者の無過失責任  このように、所有者の権利が強く保障される一方で、所有者は重い責任も負っています。  通常は、過失があった場合に責任を負わされるのが原則ですが、例外的に、民法第717条によって、所有者に過失がなくても所有物により損害が発生した場合は責任を負うことがあります。これを「無過失責任」といいます。  つまり、自分のものだから何でも自由にして良い訳ではなく、空き家の状態によって周囲に損害を与えた場合には、被害者に対する賠償責任を負うことがあります。例えば、空き家をきちんと管理していなかったため、空き家の屋根が崩壊してその横を通りかかった人を死なせてしまった場合には、巨額の賠償義務を負うことになりかねません。  空き家だからといって管理をしなくても良い訳ではなく、周囲に迷惑が掛からない程度の管理は必要だと思います。近年、大地震や予測不可能な自然災害が多く発生している中、空き家による損害が発生する可能性も高まっていることからすれば、なおさらのことです。 何かが起こってからではなく 何かが起こる前に  これまでは、空き家といえども所有権により保障されるため、実際に空き家による被害が発生しなければ対応は難しいのが現状でした。しかし、「宇都宮市空き家等の適正管理及び有効活用に関する条例」のように、空き家による被害が発生する前に行政が所有者の同意なく必要な措置を取ることができる「代執行」などの規定を盛り込んだ条例が全国的に制定されています。代執行は所有権への侵害の程度も少なくないため、慎重な対応が求められますが、ライフスタイルの変化と共に、所有権を強く保障するというこれまでの流れから、所有物を適切に管理する義務があるという方向に変わりつつあると感じています。  空き家についても、今後は、何かが起こってからではなく、何かが起こる前に、所有者として適切に対応することが求められるようになると思います。 プロフィール 亀岡(かめおか)弘敬(ひろたか) さん ほたか総合法律事務所弁護士 市空き家等対策審議会会長 広報9月号プラス7ページ ------------------------------------------------------------ 私の見方 空き家対策もまちづくりの一つ 坂本 保夫さん ------------------------------------------------------------  自治会で皆さんと月に1度の定期清掃をしている中で、雑草が生い茂り通学路に悪影響を及ぼしていたり、木の枝が伸びて電柱に絡みそうになったりしている空き家が目に付くようになり、重大な事故や事件に発展する前に何とかしようと取り組みを始めました。  まずは、どこにどんな空き家があるのかを自治会で調査しました。また、雑草が生い茂り通学の支障をきたす恐れがある道路の草刈りを自治会で行ったり、所有者や行政に必要な対応をしてもらったりしています。 住んでいるうちから家の将来を話し合う しかし、何でも自治会や行政がやってくれると思わないでください。まずは自分でできることは自分でやることが重要です。皆さんの人生設計の中に今住んでいる家の将来は入っていますか。生活スタイルや子どもの考え方は変わってきています。空き家問題を発生させないためには、住んでいるうちに家族で将来の設計を考えておくことが大切であると思います。 地域とのコミュニケーションを大切に  たとえ空き家になってしまっても、周りの助けを借りながら管理したり、地域の交流の場として提供したりすることができるかもしれません。そんな相談を周囲にするためにも、日ごろの地域とのコミュニケーションを大切にしてもらいたいです。皆さんも、あまり話したこともない人から突然お願いされたら抵抗があると思います。私たちも同じです。「あの家だったら力になろう」という思いがやはりあります。  人と人とのつながりがあるまちは、さまざまな問題にも立ち向かえる魅力的なまちだと思います。まだ地域と関わりを持ったことがない人も、まずは地域の行事やお祭りに参加することから始めてみませんか。 プロフィール 坂本(さかもと)保夫(やすお) さん 市地域まちづくり推進協議会会長 瑞穂野地区まちづくり協議会・連合自治会会長 広報うつのみやプラス「空き家問題」についての問い合わせ先 市民まちづくり部生活安心課  電話 632‐2266、ファクス 632‐6600 Eメール:u1815@city.utsunomiya.tochigi.jp 広報9月号プラス8ページ ------------------------------------------------------------ 前回の広報うつのみやプラス ------------------------------------------------------------ 前回の広報うつのみやプラス 「再発見 大谷の魅力」の概要 大谷石のある暮らし  大谷石は、家の塀や倉庫の建材として使われていたり、休憩場所の腰掛けとして使われたりしているなど、私たちの生活の中に、さまざまな形で溶け込こみ、親しまれています。 石のまち大谷  大谷地区は、地下採掘場跡がある大谷資料館・平和観音・大谷景観公園など多くのスポットがあり、自然の中に歴史や文化を感じられる日本有数の景勝地です。 これからの大谷へ  大谷石の加工技術や職人としての思いなどを次の世代に伝えていくことや、地元の人たちが大谷のすばらしさに誇りを持ち、訪れた人たちに対するおもてなしの気持ちが、これからの大谷の発展に必要ではないでしょうか。 私の意見・提案 前回のテーマ 再発見 大谷の魅力  前回の広報うつのみやプラス「大谷」に対して76人の市民の皆さんから意見をいただきました。代表的なものを紹介します。 (1)どのような取り組みがあると「大谷に行ってみたい」と思いますか。(複数回答可) 食事やスイーツ、お土産などを提供する飲食店などの充実 53 大谷の見所を巡ることができるマップなどの充実 40 大谷周辺のお薦め観光スポットなどを組み合わせたツアーの実施 36 バスなどの公共交通機関の充実 31 ガイド案内付き大谷ウオーキングツアーの実施 26 自動車で行く場合の駐車場の充実 25 大谷地区を周遊するレンタサイクルの整備 25 スマートフォンなどを用いた情報発信の充実 14 その他 64 その他の主な意見 大谷周辺の観光スポットに「道の駅うつのみやろまんちっく村」を入れ、そこに「湯処あぐり」も入れる(旭2丁目・70代)。 もっと大谷の魅力を高める景観づくりと、そこまで行けるような導き方をPRする(下栗町・40代)。 地元の人が楽しめるイベントを定期的に開き、根付かせる(西刑部町・30代)。 (2)大谷に多くの観光客が来るために必要なことは何だと思いますか。 歴史や文化の話ができるドライバーがいる観光タクシーを駅前に設け、大谷には、コースター・ペン皿・壁掛けのような物を作る体験コーナーを設ける(上戸祭4丁目・60代)。 大谷石を使ったものづくり体験教室の充実(上戸祭2丁目・70代)。 映画撮影の誘致など、全国のメディアを使って観光スポットとしての知名度を高くする(豊郷台2丁目・30代)。 大谷石の採掘跡は観光名所になり得るので、観光面での整備と、東京と本県周辺へのPRの実施(旭2丁目・70代)。 地元の人のおもてなしの心。旅行会社にツアーを組み込んでもらう(瑞穂1丁目・60代)。 大谷観音・景観公園・大谷寺といった中心スポット近辺に、若者に受ける喫茶店(カフェ)・レストランなどの飲食店があると良い。森林公園とタイアップして、サイクリングの人たちの休憩ポイントとして、アピールする(鶴田1丁目・60代)。 周辺の環境整備と周辺の野菜やフルーツを使ったおいしい食べ物を提供するレストランやカフェ・販売所の誘致や、石を素材にしたモダンな工房の誘致(清住2丁目・60代)。  広報うつのみやプラスや政策特集は、皆さんに一緒に考えていただきたいテーマを取り上げ、年4回編集します。