知ると楽しい 広報うつのみや+(プラス) 宇都宮情報 -------------------------------------------------------- 再発見 大谷の魅力 -------------------------------------------------------- 大谷石は、約2000万年前の海底火山の噴出によりできた凝灰岩であるといわれています。その産出地「石のまち大谷」は、古くから景勝地として知られていました。近年では、大谷地区だけでなく、まちなかでも大谷石の利活用が注目されています。 今回の特集では、大谷の魅力を、大谷に携わる人たちの思いと共に紹介します。 -------------------------------------------------------- 大谷石のある暮らし -------------------------------------------------------- 大谷地区には、大谷石の産地としての営みと密接に関係しながら造られた、大谷独特の風景が点在しています。また、大谷地区から少し離れた市街地の暮らしでも、大谷石は、家の塀や倉庫の建材として使われていたり、休憩場所の腰掛けとして使われたりしているなど、私たちの生活の中に、さまざまな形で溶け込こみ、親しまれています。 今回は、大谷石の建物を再生し利活用している人、大谷への観光ツアーを企画・運営している人、大谷石彫刻家、有識者といった、大谷にさまざまな角度から携わっている人たちに焦点を当てます。 「悠日」オーナー 柏崎 健次さん 大谷石倉庫群との出会い 私は、南宇都宮駅前の吉野町でギャラリーやカフェを経営しています。今でこそ、ギャラリー、カフェの他、和食のお店やスタジオがあり、たくさんの人が集う素敵な空間になっていますが、それ以前は、この倉庫は誰にも使われずボロボロで、ごみや雑草の中で悲しそうにたたずんでいました。この倉庫群を活用しようと思ったきっかけは何か、と言われると、正直、とても困ります。強いて言えば、私はこの倉庫を見るたびに、何か心を揺さぶられるような、言葉にならない思いがふつふつと沸いてきたことがきっかけだと思います。そんな不思議な感覚になってからは、まるで運命に導かれるように、いろいろな人と出会い、いつの間にか、この倉庫群のオープンに至っていました。そして、今もこれからも、何かを表現するアーティストや、何かを感じて帰路につく人など、いろいろな人がここに集うようになってくれることが、私のやっている大谷石倉庫群の役割だと思っています。 吉野町にある良い野原=ファイン・フィールド この倉庫群の活用をきっかけに、いろいろな人が集うようになりました。ここは「ファイン・フィールド」と命名され、4月下旬頃には、市文化会館などと連携したイベントを実施しています。このような取り組みや、日頃からの創作活動によって、ファイン・フィールドの周りには文化が香り、ここに暮らしたりイベントに参加したりする人たちが楽しく、気持ちよく過ごすことができるまちになってきたのではないか、と感じています。私は、楽しさが感じ取れるまちや場所には、自然と人が集まってきて、にぎわいが出て来るものだと思っています。 コラボレーションで生きる魅力的な石 私にとっての、最大の大谷石の魅力は、「周りとの調和力」と「相手を引き立たせる力」だと思います。この倉庫群自体も、それ以前は古びた空き倉庫でしたが、整備していくと、周りの住宅街から浮くことなく、なじんでいきました。また、ギャラリーで絵画や彫刻などの美術作品を展示しても、音楽を奏でても、大谷石と作品・音楽が見事なまでに調和し、大谷石自体が主張し過ぎることなく存在しながらも、主役を柔らかく、かつ、しっかりと引き立ててくれる力を持っているのです。気のせいかもしれませんが、空気もきれいになり、水もおいしく感じるようになります。 大谷に行って、触れて、感じること 宇都宮に住んでいると、あまりに日常的に大谷石の塀や石畳の風景を目にしているためか、無意識に見過ごされ、その魅力や素晴らしさに気付いていない人が多いと思います。見慣れすぎて、何とも思わなくなってしまっている。例えば、自分の家に大谷石の塀があったとしましょう。きっと普段はしないかもしれませんが、一度、石の面に触れて、そっと目を閉じてみてください。石を切り出した職人の息づかいや想いを感じ取ることができると思います。また、市内の人にも、市外の人にも、ぜひ、大谷の大谷石地下採掘場跡に行ってほしいと思います。あの巨大な地下空間を見て、岩肌や空気に触れたとき、きっと何かを感じ取ることができるはずです。あれだけの規模の、現在稼動中の大谷石の産地がこの宇都宮にあるということ自体、とても希少なことで、もっともっと、私たち宇都宮市民が誇るべきことなのだと思います。私たちの日常生活の中に、大谷石がこれほどまでに生活の一部になっているのは、大谷石の産地がすぐそばに存在しているからこそなのです。 -------------------------------------------------------- 日本屈指の景勝地 石のまち大谷 -------------------------------------------------------- 中心市街地から北西約8キロメートルの地点にある大谷地区。自然が作り出した凝灰岩が広く分布し、長い歳月にわたって人が関わることにより、独特の景観が生み出されてきました。 大谷地区には、手掘りの時代から機械化された昭和30年代までの大谷石の地下採掘場跡がある大谷資料館・平和観音・大谷景観公園・越路岩・御止山など多くのスポットがあり、自然の中に歴史や文化を感じられる日本有数の景勝地です。 また、毎年、大谷景観公園などを会場に、大谷石工作体験など、地元住民が主体となった「フェスタin(イン)大谷」などのイベントを開催しています。 ファーマーズフォレスト・着地型観光コーディネーター 石崎 美映子さん 第一印象 大谷との最初の出会いは、県外から宇都宮に引っ越しをしてから3カ月くらいたったころでした。日光の帰り道に大谷街道を通ると、石の蔵が連なる家並みがあり、それはとても風情があり心に深く刻まれ、平和観音にはただただ圧倒されました。周囲からはほとんど聞くことのなかったエリアだったので、「なぜ、ここを教えてくれなかったのだろう」という気持ちでした。第一印象から、全国でもまれに見る、他にはないエリアだと思いました。 それから2年近く県内全域の観光事業に携わりましたが、ツアーを企画するために、昨年9月に改めて、大谷地区を見てみると、歴史的背景と大谷石職人の粋を感じました。さらに地元の人たちから石材業が盛んだったころの話しを聞き、想像以上に、奥深い世界が広がっていることを知りました。 観光における大谷地区の可能性 大谷景観公園1つを取ってみても、全国でも数少ない、人工美と自然美の融合した場所だと思います。歴史もとても興味深く、昔、石を運ぶために使用されていたトロッコの線路やトンネルの場所、昭和初期の写真など、日々、驚きと発見の連続です。 また、いろいろな側面を持つ大谷地区には、グリーンツーリズムや、地質学と地形学・景観・地形などの自然資源を対象としたジオツーリズム、自然・歴史・文化など地域固有の資源を対象としたエコツーリズムなど、多種多様なツーリズムが成り立つ可能性を感じています。 さまざまな視点・観点・年齢層に対応できるスポットが存在していることも、大谷地区の魅力の1つではないでしょうか。 また、その地域でお薦めの観光資源を基にした旅行商品や体験プログラムをお届けする着地型観光は、見るだけでなく何か体験をしてみたい、その土地の風土を肌で感じたいという人に大谷の魅力を知っていただく最適な観光方法だと思います。 大谷石の調和力 大谷石に注目してみると、いろいろな質感があり、それぞれに趣があると思います。そして、木、花、ガラスなど、いろいろなものと組み合わせると、大谷石の素朴な感じ、温かい雰囲気、クールな表情など、異なった素材とでもうまく融合し、大谷石の持っている懐の深さを感じます。私はその「調和力」こそが、大谷石の最大の魅力だと思います。 地域と一緒に盛り上がる 私自身、旅行が趣味な上、仕事柄、全国の観光地を見てきました。印象深い旅行やもう一度行きたいと思う土地には、「心で交わる観光」があると思います。「あの時、あの場所でこんなことを教えてくれたな、あの親切な観光タクシーの運転手さんや街を案内してくれた地元のガイドさんなど、もう一度会ってお礼がしたい」と、「その土地の人」の存在が重要だと感じています。地元の人にとっては身近な大谷という空間ですが、もう一度大谷という場所の魅力を感じ、それを発信していくことで、地域が盛り上がっていくのではないかと思います。 大谷地区は、個性的で、この地域ならではのさまざまな体験・景観を楽しめる、他の観光地に勝るとも劣らない魅力がぎっしり詰まった場所ではないでしょうか。 -------------------------------------------------------- これからの大谷へ -------------------------------------------------------- 石工・大谷石彫刻家 渡邉哲夫さん 石の里・大谷からの熱き思い 大谷石は名脇役 私は、大谷石の最大の魅力は、何かと一緒に存在することで、相手を引き立たせ、かつ、大谷石自体も魅力を放つところだと思います。決して出しゃばらず、謙虚で控えめ。でも存在感はしっかりある。大谷石はそんな石なのです。 アメリカの巨匠、フランク・ロイド・ライトによって、旧帝国ホテルの建材として大谷石が使われました。旧帝国ホテルはライトの傑作・大谷石のレリーフと、その周りのテラコッタ(建築陶器)や木材、家具などと一緒に存在したからこそ、重厚で格調高い玄関を持つ、明治を代表する建築物になったのだと思います。 俳優の中にも、主役を引き立たせ、ドラマを味わい深いものにする「名脇役」と呼ばれる人がいますが、大谷石はまさに、名脇役なのだと思います。 石の神様の声 私が28歳の頃、旧帝国ホテルの中央玄関部分の移築、修復を手がけました。当時は、私はまだ若く、自分の未熟さなど考えもしないで、意気揚々とライトの傑作に挑みました。 しかし、すぐに壁にぶつかり、自分の未熟さを痛感しました。連日連夜、深夜まで仕事をしましたが一向に進まず、次第に肉体的にも精神的にも追い込まれていきました。ある夜、時間を忘れて仕事をしていたとき、私は石の神様の声を聞いたのです。 信じられないかもしれませんが、何とも優しく、落ち着きのある女性の声で「慌てなさんな」と。後にも先にも、こんな体験をしたのはこの1回だけですが、それからは、肩の力が抜け、この大仕事に取り組むことができました。このライトの作品に出会えたことが、私の原点なのです。 次の代へ伝えたいこと それからというもの、私は職人として、いつか必ずライトを越えることを目指してやってきました。今でも、そう思っています。しかし、一度も、ライトを越えることはできていません。もしかしたら、一生無理なのかもしれませんが、ライトを越えることが私の究極の目標なのです。それと同時に、自分たちの培ってきた技術や職人としての思いや魂を、次の世代に伝えていくことも、大切なことです。いくら美しく刻む技術を身に着けても、そこに職人としての思いや魂が込められていなければ、良い作品は生まれないのです。私は時々、地元の学校に講師で招かれることがあり、子どもたちの感性の豊かさに驚かされますが、きっと、子どもだけでなく、人は誰でも素晴らしい感性や感覚を持っているのだと思います。自分ではそれに気が付いていないだけなのです。 若い職人たちが、大谷石と向かい合ったときに何を感じ、何を作りたいと思い、作品を通して何を伝えていくのか。私たちの培ってきた技術や思いを受け止めてくれて、彼らなりの、新しい作品を生み出してくれることを、とても期待しています。 とちぎボランティアNPOセンター ぽ・ぽ・ら 所長・ 宇都宮大学名誉教授 工学博士 藤本 信義さん 地域・資源・人が一体となって魅力を作り出す 組み合わせで発展 「組み合わせの妙」という言葉がありますが、まさに大谷石にぴったりの言葉ではないでしょうか。大谷石には、他の素材を引き立たせる力と、他の素材と相まって自らも光り輝く力があります。大谷石と「もの・食べ物・空間」など、何を、どんな風に組み合わせるかで、新たな可能性が生まれます。フランク・ロイド・ライトによって使用された旧帝国ホテルの大谷石は、テラコッタとの組み合わせでした。 また、大谷石造りの建築物の内部は独特の雰囲気があり、何か心地よいくつろげる空間です。そんな大谷石の空間は、ステージ発表やダンス、ファッションショーなど、さまざまなイベントにも活用できます。大谷石をいろいろな形で組み合わせ、それを発信していくことが、魅力の発展につながると思います。 若い世代を育てる 地元の中学校で、石彫りの体験活動を行っています。その際に、大谷石はライトが旧帝国ホテルに使用したことで有名になったことなど、歴史についても話をしています。体験だけでなく、成り立ちも知ることで、若い世代にも自分の住んでいる地域には、こんなにすばらしいものがあることを誇りに思って欲しいからです。 これからの大谷 宇都宮のまちなかにも大谷石造りのものがたくさんあります。それらがまちなかにさらに増えれば、宇都宮の魅力はもっと増していくでしょう。新たな大谷石の建築物を造れる職人もいますし、建築物を案内できるガイドが増えれば、観光スポットとして、より発展していくと思います。また、子どもたちにも、大谷石が自分たちの生活の中に、身近に使われていることを伝えることも大切です。 石工の技術の伝承はとても重要ですが、一番大切なことは、地元の人たちが大谷のすばらしさに気付き、誇りを持つことではないでしょうか。今後、多くの人が大谷地区に来てくれることが、この地域の発展につながります。そして、訪れた人たちに、大谷の魅力をおすそ分けするというおもてなしの気持ちが、これからの大谷の発展には欠かせないことだと思います。 あなたの意見をお寄せください 市民の皆さんから、「大谷」についての意見・提案をお受けします。寄せられた意見・提案などは、施策の参考とします。なお、一部を後日、広報紙で紹介します。質問などへの回答は、直接本人あてに返信しませんので、ご了承ください。 下のはがき(切手不要)を切り取り、3月17日(月)までにポストに投函してください。他のはがきや手紙・ファクス・Eメール・市ホームページのアンケート(携帯サイト含む)でも受け付けます。 送付先 郵便番号 320-8540 市役所総合政策部広報広聴課 電話 632-2025、FAX 639-0627 Eメール u2030@city.utsunomiya.tochigi.jp 広報うつのみやプラス「大谷」についての問い合わせ先 経済部観光交流課 電話 632-2436、FAX632-5420 Eメール u2315@city.utsunomiya.tochigi.jp アイデア通信 大谷について私はこう考えます どのような取り組みがあると「大谷に行ってみたい」と思いますか。(複数回答可) 1 バスなどの公共交通機関の充実 2 自動車で行く場合の駐車場の充実 3 スマートフォンなどを用いた情報発信の充実 4 大谷地区を周遊するレンタサイクルの整備 5 ガイド案内付き大谷ウオーキングツアーの実施 6 大谷の見所を巡ることができるマップなどの充実 7 食事やスイーツ、お土産などを提供する飲食店などの充実 8 大谷周辺のお薦め観光スポットなどを組み合わせたツアーの実施 9 その他 大谷に多くの観光客が来るために必要なことは何だと思いますか。 -------------------------------------------------------- 私の意見・提案 前回のテーマ 健康 -------------------------------------------------------- 前回の広報うつのみやプラス「健康」に対して55人の市民の皆さんから意見をいただきました。代表的なものを紹介します。 前回の広報うつのみやプラス 「健康」の概要 みんなでつくろう健康で幸せなまち 宇都宮市は生活習慣病の発症リスクを高める「肥満」が、栃木県としては「塩分摂取量」の割合が全国と比べて高くなっています。生活習慣病の予防・改善のためには「一に運動、二に食事、しっかり禁煙、最後に薬」です。 病気で寝たきりになったり、介護を受けたりせずに、いつまでも健康で幸せに、自分らしく生活し続けるため、今から必要なことは何でしょうか。 いつまでも自分らしく好きなことを続けるために 市保健センター(ララスクエア9階)での運動教室の実施、スーパーマーケットなど身近な場所でのヘルシー料理試食会、地域での食生活改善推進員・健康づくり推進員による活動、企業の健康経営など、健康づくりに取り組みやすい環境を整えようという動きが市内でも進んでいます。忙しい人も、いつもの生活の中でまずは今より10分多く体を動かしてみる(+10(プラステン))など、健康づくりに取り組んでみませんか。 広報うつのみやプラスや政策特集は、皆さんに一緒に 考えていただきたいテーマを取り上げ、年4回編集します。 (1)「これから」のため、すぐに始められる健康づくりは何だと思いますか(複数回答可)。 徒歩や自転車での買い物・通勤 35件 定期的な健診受診 35件 減塩を心がける 33件 野菜を十分に食べる 31件 十分な睡眠時間の確保 31件 適正体重の維持 30件 積極的な階段利用 29件 毎食後の歯磨き 25件 禁煙を心掛ける 24件 休肝日を設けるなど適度な飲酒 22件 その他 27件 その他の主な意見 時間のあるときに歩く(氷室町・30代)。 ストレッチ、森林浴などのリフレッシュ(御幸町・40代)。 スポーツクラブで、ヨガやダンス(陽南4丁目・60代)。 (2)「ともに支え合う、健康で幸せなまち」にするために必要なことは何だと思いますか。 1人で実行・継続することは難しいので、仲間をつくるか、すでに行われている健康づくり活動に参加し、互いに励まし合いながら実践していくことが大切(花房2丁目・60代)。 年に1回は健康診断を受け、指摘されたら精密検査を受ける(上戸祭2丁目・70代)。 積極的にボランティア活動に参加して元気をもらう(上戸祭4丁目・60代)。 一人ひとりが「自分の健康は自分で守る」をモットーに健康かチェックし、生活習慣病を予防することで、健康寿命を延ばす(宮の内4丁目・70歳代)。 近所付き合いの中で、お互い顔を合わせ、「お元気ですか」と思いやり、何かあれば助け合う社会(簗瀬町・30代)。 あいさつ運動を学校だけでなく、企業でも行い、コミュニケーションの促進を図る(茂原町・30代)。