総務常任委員会委員長報告(1月29日)
総務常任委員会に付託されました議案第1号「宇都宮市のLRT(次世代型路面電車)導入計画の賛否に関する住民投票条例の制定」について、審査の経過と結果を報告いたします。
この議案は、地方自治法第74条第1項の規定により、「宇都宮市のLRT(次世代型路面電車)導入計画の賛否に関する住民投票条例」制定の直接請求があったため、同条第3項の規定により、市長の意見を附して付議されたものであります。
議案の審査に当たっては、市長を初め、議案に関係する部課長等のほか、条例制定請求代表者の上田憲一氏及び曽我昌平氏を参考人として招致し、質疑等を行ったところであります。
また、委員会条例第23条第2項に基づく、委員外議員の発言申出を許可し、2名の委員外議員が出席いたしました。
初めに、参考人に対する質疑についてでありますが、「本市においては、クリーンパーク茂原建設事業や区画整理事業などにおいて、数百億円規模の事業を実施している。そのような中、なぜ、LRT事業においては、住民投票が必要と考えるのか」
との質疑に対し、「クリーンパーク茂原建設事業や区画整理事業は、特定された場所で実施される事業であるが、LRTは、整備されることによって、市の公共交通が変わることになるため、市民にとって影響の大きい事業であると認識している。そのようなことから、市民の皆様の意見を伺った上で事業を進めることが重要と考えている」との説明がありました。また、「今回の署名率が7.3%であったことから、市民の関心はまだまだ薄いのではないかと思われる。このような状況の中で、市民が公正な判断をするのは極めて難しいのではないか」との質疑に対し、「12年かかっても、まだ、LRTについてのメリット、デメリットが伝わってこない。ただ、条例を制定することにより、話題の焦点を絞っていけば、市民の声を把握することは不可能ではないと考えている」との説明がありました。また、「今回の案件は、自治基本条例に規定される市政に関し特に重要な事項であるのか、また、直接住民の意思を確認する必要があるのか」との質疑に対し、「LRT導入については、宇都宮市の将来のまちづくりを決める、重要な事業であると認識しており、住民投票を行うに値する事項であると考えている。また、行政が世論調査等で、住民意思の確認を行っていない状況をみれば、住民投票において、直接、民意を確認する必要がある」との説明がありました。また、「説明が十分にされていれば、住民投票は必要ないと思うか」との質疑に対し、「説明がつかないものと考えており、住民の意向を聞くことが重要であると考えている」との説明がありました。また、「首長と議会の二元代表制に期待をしていたが、現実にぶつかって厳しいという判断から、直接請求権の行使につながったのか」との質疑に対し、「市政運営について、民主主義の手法として、二元代表制のしくみの中でという思いもあるが、LRTについては、直接請求権を行使すべき事案であると考えている」との説明がありました。また、委員外議員からは、「署名収集に対する市民の受け止め方」、「民意の捉え方」などについて質疑がなされました。
次に、執行部に対する質疑等についてでありますが、「LRTを推進する計画が先に進んでいるが、計画に基づいた調査結果を随時市民に報告しなければ、一人歩きになってしまう。高速車両の導入や、ルート変更等もあるが、執行部は市民に十分な説明をしているのか」との質疑に対し、「市民へ伝わりやすい説明として、オープンハウスや、今年から、地区連合自治会を対象とした地域説明会を行っている。市民への説明に当たっては、検討の途中で、不確定な事項についても、極力、情報を提供し、市民の意見を伺っていきたい」との説明がありました。また、「LRTについてのコンセンサスに向け、住民の意思を把握し、市民理解を得るためにも世論調査を実施すべきと考えるが、いかがか」との質疑に対し、「世論調査の実施については、現時点では考えてはいないが、オープンハウス、市民フォーラム、地域説明会や出前講座などで、市民の方々の生の声を聞きながら、市民理解については判断していきたい」との説明がありました。また、「LRTの採算性については、多くの市民が心配しているが、市としては、どのように予測をしているか」との質疑に対し、「採算性については、国の軌道の特許取得などを行っていくうえで、厳しくチェックされることとなる。採算性の基となる利用者数需要予測については、現在、企業ヒアリングによる予測であるが、今後、全従業者へのアンケート調査により精度をさらに高めていきたい」との説明がありました。また、「佐藤市長は、LRTの整備について、平成24年11月に執行された市長選挙において、当初から公約として位置づけ、資料などを出していたのか」との質疑に対し、「LRTの整備については、3期目の市長選挙以前から公約として掲げていたが、3期目の選挙に当たっては、リーフレットなどに『LRT推進』を明確に記載し、市民の皆さんに判断していただくという気持ちで臨んだところである」との説明がありました。また、「今回の直接請求は、自治基本条例第15条に基づき、住民投票を求めているものだが、この規定に関し、どのような考えを持っているのか」との質疑に対し、「条例の趣旨は、市民に直接意見を聞く必要があると認めるときは、条例を制定し、住民投票を実施するということである。LRTの導入については、長期にわたり、市民説明を行い、また、議会において議論いただいている。さらには、先の市長選において大きな争点となり、その結果、市長が市民の負託を受けたことも踏まえ、住民投票は必要ないと判断した」との説明がありました。また、「現在、議会においては、公共交通問題調査特別委員会が設置され、昨年6月には中間報告として、交通結節機能の充実強化や、わかりやすい料金体系などについて提言がなされたところである。これらの提言を踏まえ、具体的にどのような取り組みを行っているのか」との質疑に対し、「公共交通問題調査特別委員会の中間報告書については、本市の公共交通ネットワーク構築に向けて取り組むべき課題に対し、具体的な提言をいただいたものと考えており、LRTの導入とあわせ、それらの方策を一体的に取り組むことにより、円滑で快適な公共交通ネットワークの構築が図れるものと考えている。現在、バス路線の再編やICカードの導入などについて、バス事業者と連携を図りながら検討を進めている」との説明がありました。また、「LRTが導入された場合と導入されなかった場合の影響についてどう捉えているか」との質疑に対し、「本市が目指しているネットワーク型コンパクトシティの形成の基盤となるのが公共交通ネットワークであり、その東西基幹公共交通としてLRTの導入を検討しているところである。LRTが導入されない場合は、クルマ社会の進展による、自動車を運転できない方々の問題や企業活動の問題などの不安が生じるものと考えている」との説明がありました。また、委員外議員からは、「世論の把握」などについて質疑がなされました。
次に、委員間において、主に、「各会派における議案第1号についての議論の経過」や「3万人分の署名についての捉え方」、「市長選の争点や選挙結果」、「LRTの通らない地域の公共交通のあり方」について、討議が行われ、これを踏まえ、会派の意見表明を行いました。
まず、議案に対する賛成意見でありますが、「今回の議案はLRTの賛否ではなく、『市政に係る特に重要な事項であるか』、『直接に住民の意思を確認する必要があるか』の2点について判断するものである。LRT事業は、その投資規模と事業の重要性を鑑みれば、特に重要な事項であることに異論はない。また、議会で満場一致で可決される案件であれば、二元代表制と議会制民主主義の負託の範疇で解決すべきであるが、この直接請求は、市民説明会等の延べ参加者数の2倍以上、直接請求の規定の約3.7倍にのぼる署名を得て提出されており、市民意思として極めて重く受け止める必要がある。これらを踏まえ、この議案を議会が否決することは、自治基本条例の精神を根底から覆す行為であり、断じて行うべきではなく、住民投票を行い、市民のコンセンサスを得た上、進展させることが望ましい」との意見、「市民は、相変わらず無関心層が多く、市長は市民の負託を受けていると言っているが、その根拠は不安定な材料としか受け止められない。今回の直接請求は、全く別に認められた直接民主制の権利を住民側が求めているものであり、そのような背景を踏まえれば、住民投票を実施するべきであり、それにより、良い結論が見出せるものと判断できるため、この議案は賛成したい」との意見、「住民投票を実施せず、どうこういう時期ではない。住民投票を実施して、市民の意見を聞いた上で議論すべきである。執行部に対し、約1億3,000万円の調査費を認めたのだから、住民投票に必要とされる約8,000万円も承認すべきではないか」との意見、「この議案は二元代表制が問われ、また、我々議員の良識が問われている大きな議題であることから、賛成したい」との意見がありました。
次に、議案に対する反対意見でありますが、「LRT事業については、約20年かけて、市民を交えながらの審議会や、議会においても特別委員会を設置するなど、議論を交わしてきたことは事実である。住民投票は、自治基本条例において、市民意見を吸い上げる1つの手法とされているが、その対象については、全市的な事案ではないかという思いもある。また、民意を問う手法については、住民投票のほかにも選挙など、様々な手法があり、LRT事業については、まだ不明確な部分もあるため、執行部、そして我々議員も、丁寧に市民と話し合いをしていくことが、民意の反映につながると考えることから、この住民投票については賛成できない」との意見、「宇都宮市のLRT事業については、総合計画の主要事業の一つに位置付けられており、国内の社会的動向を踏まえながら、将来のまちづくりに向けた見地から、実現に向け取り組んでいく必要がある。よく問題視されている採算性についても、需要予測を検証した結果、採算の見通しが高まったことが報告されている。また、これまでも、一般質問や常任委員会、特別委員会において、長い時間をかけて、さまざまな視点から執行部との間で進展ある議論を積み重ねており、今後もそのようにしていくべきと考えていることから、住民投票を実施する必要はないものと考える」との意見、「議会制民主主義において、議員は、全体的な視点に立ち、まちの将来性を展望した見解も必要である。今回の議案においては、LRT事業が『自治基本条例の特に重要な事項』に当てはまるかどうかをシンプルに考えていくことが大切である。かつて、旧河内町の合併の際に住民投票を実施したが、これは、合併という町の将来がかかった重要案件について、アンケートにより得られた合併賛成という民意に反した対応を議会がとったためである。しかし、このLRT事業については、市長の意見書にもあるように、決して民意を軽視して推進している事業とは言えないため、住民投票には賛成できない」との意見がありました。
この議案につきましては、起立採決の結果、原案を否決いたしました。
これをもちまして、総務常任委員会委員長報告を終わります。
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